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2006年6月30日 (金曜日)

オシムさんだけじゃなくTOMも来た

TRが来た。
久しぶりに、来た。
 
TOM ROBINSON-イギリスのシンガーソングライター。1950~
 
ライブやるのかと思ったら、家族旅行かよ…京都観光かよ……orz
 
 
トム・ロビンソン(TR)の名前をおぼろげに覚えている人は、家族旅行と聞いて「え?」と思うだろうが、そうなのだ、TRは女性のパートナーがいて、子供も2人いるのだよ。
 
時は1970年代後半、バクハツ的なパンクロックのブームの中で、TRは異彩を放ってた。
白いワイシャツを腕まくり、そしてギター、握り拳。
「2-4-6-8 Motorway」という明快なロックンロールナンバーが世界的にヒットし、(そう、アメリカでさえ売れちゃったね)、ピストルズやクラッシュなどと並び、パンクムーブメントの一角となった。
ただ、“異彩”というのが、彼のもう一つのヒット曲が「Glad to be GAY」だったから。
 
ゲイのミュージシャンはカムアウトしてる人もそうでない人も、既にたくさんいた。
グラムロックの波に乗って、そういうのは全然違和感なく世間に受けとめられてた。
 
でも、TRは、グラムのような妖しさとか退廃とは全く異なる。サラリーマンのような出で立ちでギターを弾き、叫び、“ただ単に同性が好きなだけの”普通の男としての主張を歌に託した。
日本では、ゲイは嘲笑や嫌悪の対象だったりするが、ただそれだけ。が、当時のイギリスでは場合によっては犯罪だったりもしたのだ、信じられないことに。
そういう背景のもとに、TRは戦いを挑んでいた。
 
 
……と、ここまでは私が往年のロックファンの一般教養として知っていること。
その当時のTRには、それほど興味がなかった。
私が彼と邂逅したのは、税金未払いで逃亡した東ドイツから戻ってきてからのこと(説明するといろいろややこしいんぢゃ、このオヤジの人生は。割愛、割愛っと)

 
80年代半ば、ラジオから、「リキの電話番号」が流れてきた。
でも、それはスティーリー・ダンではない。トム・ロビンソンだった。
「HOPE & GLORY」という皮肉なタイトルのアルバムに、「リキ」やピーター・ゲイブリエルとの共作「アトモスフェリクス」、そして「ウォー・ベイビー」という素晴らしく感動的なナンバーが収録されている。
このアルバムに心奪われた。
ストレートなロックンロールではない。洒落のめしたサウンドにケンブリッジ育ちのTRのイギリス人ぽい狷介さや皮肉っぽさ、それに相反する暖かで大きな心が満ちていた。
 
パンクブームの中の主要人物は多くが舞台を退き、大金持ちとなって悠々自適に暮らしたり、ドラッグに溺れて体を壊したり亡くなったり。
第一線で活躍を続けるスティングは、労働者クラスの象徴だった鼻を整形し、貴族の役を映画で演じていた。そんな頃だ。
 
そして、TRの次作アルバムSTILL LOVING YOU」1986)では、自らの半生をサマリーするような濃く、切なく、力強い曲が並んだ。
 
と、この頃、知り合った友人が、なんとTRとはアーティストとファンの域を越えて長年親交を結んでいる人物だったのだ。世間は狭いな、おいっ。
(この2人の関係も書くとキリがないほどなので、省略)
 
力作「STILL LOVING YOU」をひっさげて、パンクブーム以来あまりにも久々の日本公演。
といっても、この頃、TRは既に完全に過去の人。一応ロキノンにもインタビューが載ったくらいだから取材は来てたみたいだけど、音楽業界~♪的な展開はしてない人だったので、ライブの後は当然、みんなで飲み会だっ! 天狗だ!
 
いろいろ悩み多き若い日々をおくってた私がグチャグチャなニホンゴとたどたどしい英語で思いのたけをぶつけると、日本びいきでニホンゴも少々いけるクチのTRから的確な答えが返ってくる。
一撃のもとにストンッと腑に落ち、癒される感覚。
さすが歌うソーシャルワーカー、トム・ロビンソンだ(おいっ)
 
「でも、さっき“彼女”って言ってたよね」
「あ~、トムね、女の子を好きになっちゃって今一緒に住んでるの。子供も出来たみたい」
「ええっ、昔、ゲイパワーの旗手とか言われてたのに」
デモ、ニホンノ、オトコノコ、カワイイ、スキネ~
「この、エロおやじ! 不潔っw」
 
ちなみに、この頃、欧州サッカーが好きで好きでたまらなかったので、ここぞとばかり、バンドの若いメンバーに、「プレミアではどこが好き?」とかサッカー話をふったら、
「え? サッカー? あまり見ないな。やるのも見るのも、クリケットが一番」「そうだよね、クリケット楽しいよね」
とかいう信じられない反応が返ってきて、しばしボーゼン。
クリケットって、あぁた……。

 
かくのごとく、人生の多様さをいろいろと教えてくれたTR
それから数年間隔で日本にやって来ては、その時その歳なりに抱えた問題を、いや、それを問題だと思う心自体をほぐしてくれた。
 
 
一番最後に会ってから、5、6年かと思ったら、8年もたっていた。歳とると8年なんてあっという間だな~。
最初の時、産まれるとかいってた子も、もう19歳かよ。
 
今回は、音楽活動ではなく、ホントに純然たる旅行。
ひと晩だけ、懐かしい面々が集まって、TR一家を囲んで飲むことになったが、先約があって私は参加できない。
 
いつもいつも、何かしら悩みを抱えていた時代を、TRという暖かく大きな存在に励まされながら生きてきて、今じゃなんつーか、ストレス皆無のお気楽人生をタリラリ~と暮らしている。
この、押しも押されもせぬ、堂々たるおばちゃんっぷりを見てほしかったのにな。
 
んー、でも、また数年後に会えればいいわけだ。どんどんタームが長くなるね。
 
「何もかも、遅すぎるなんてことはないよ」
 
ホントにそうだったよ、TR
諦めずにいれば、いつか解放される。I shall be released.
 

また、何年か後に、会いましょう。
京都の旅を楽しんで、TR

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コメント

ちなみに、TRのホムペで私発見。
 
でも、なんでそこにハイロウズの人たちがいるのか、全く不明。てか、記憶がない。なんでっ!?

投稿: アイアン | 2006年6月30日 (金曜日) 01時17分

うぅ~
臨場感は得られない(っていうかうらやましすぎ)けど、何かむしょうに感動~!!
アイアンさん、いい経験いっぱいしてますね~。
この文章を読んで涙するのは私の他何人いるかな。
人生「前向き、前向き!」ですね!

投稿: すばる | 2006年6月30日 (金曜日) 03時30分

たぶんそれらしい人発見。ほぼ真ん中ですがなw
金髪なのがヒロト?
話は変わるがもうすぐヒロトのソロCDがでるーーーーっ!

投稿: eb | 2006年6月30日 (金曜日) 17時04分

>すばるさん
 
なんつーか、『人』に恵まれた人生です、お陰様で。
 
すごい体験といえば、トムのコンサート中、私の真後ろにスティングがいた。→当然ライブ中だから気がつかない→後で知る→数日間はげしく落ち込む。
という笑える話がありますた。
 
 
>eb
 
おぼろげな記憶を必死に思い出したところ、私はマーシーさんからウィスキーのグラスを渡されていました。確かに。
でも、なぜハイロウズさんたちがいたのか、思い出せない。にゃんこに小判でどーもすみません。

投稿: アイアン | 2006年6月30日 (金曜日) 22時01分

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