キレイな空間・美しい空気~大地の芸術祭3
越後妻有で1番アートなのはその里山の風景だと思うんだけど、それは単に自然の造形や古い家が美しいっていうんじゃなくて…。
“そこに人の暮らしがあって、その営みが醸し出す美しさ”なのだなぁ、と思う。単純ではない。様々な何かが潜んでいる。通り一遍ではない。だけど、心惹かれる。
クルマから見る棚田風景は素晴らしい。それを維持する大変さ、冬の厳しさ(←これは新潟市民の私にとってはほとんど恐怖に近い感覚)を念頭に置いてさえなお、ウットリとする眺めだ。
←これは、芸術祭の正式エントリ作品ではないけれど、十日町中平集落で菊池歩が個展としてやっている「こころの花~あの頃へ 2009」。
敢えて、このエントリのアタマに載せます。
2006年の芸術祭で見て、有無を言わさぬ美しさに圧倒されたのだけど、今回は個展として(パスポートは使えません。300円必要)、中平集落の人々の協力を得て、さらにパワーアップしたビーズの花畑が拡がってる。夕方からライトアップされるそうで、それも見たいなぁ。
展示期間は9月末まで。
菊池歩さんの作品は他に、十日町キナーレ明石の湯の内外にディスプレイされているよ。ビーズ好きにはたまんねっす。こちらは9月15日まで。
松代会沢集落にあるアンティエグメルス「内なる旅」は、受付ポイントでアンティエさんから「歩いて300mですよ~」と言われて、“そうか、じゃ3分くらいね”と軽く考えたんだけど、これがかなりの登り道。でも、その山道にもアートな工夫がなされていて、もうすぐだなぁという期待感を持たせてくれる。
木立に張り巡らされたキラキラ光る鏡と目。パッと見、トルコのナザルボンジュという魔除けの飾り物を思い浮かべたけど、フシギな世界に引き込まれて心が静かになっていくんだ。
木立の中に分け入ってというと、十日町池谷の、福屋粧子「森のひとかけら」。
これは歩いたなぁ。 途中に山の湧き水が飲めるようになっていて、美味しかったし助かったわぁ。
アップダウンはあまりないので楽なんだけど、炎天下、山道を行けど行けど現れないアートを求めて歩くのも、この芸術祭の醍醐味か。
途中で見晴らせる里山の風景だけでもお腹いっぱい。
白いブランコ♪ そう、これは白い椅子が置かれているのではなく、ブナ林に椅子状のブランコがいくつも吊り下げられているのである。
森の中のロマンティックな白いブランコ…を漕いでるのがオサーンでどうもすみません(^_^;)
ブランコはさまざまな高さに吊られているので、実際に漕げるのは3、4台くらいかな。
ブナ林の斜面に浮かぶブランコたちに、うちの人の赤いシャツ、私たち夫婦の他に来ていた若い女性の青いチュニックが静かにユラユラ揺れてる光景は、なんとも美しかった。
虫除けスプレーをシュッシュしながら、ブランコを漕いでまったりと過ごす森の中のひと時。
楽しかったでございます。
大地の芸術祭は、クルマを停めてから山道などをトコトコ歩いて到達するという楽しみ、あるいはハードルがあるので、それもハマる要因かもしれない。
十日町土市・招魂社の山道を登っていく渡辺泰幸「風の音」。
地域の人々と作りあげた土鈴のような風鈴が山道のそこここに飾られて、涼しげな音を奏でている。そうやってハフハフと登っていった先には、風鈴サークルが出現。

ちょうどよく風が吹いてたので、このサークルの中はめくるめような感じ。幸せ。里山を歩き回って探す楽しみがそのままアートになったのが、松之山中尾・鏡が池の、谷山恭子「目を凝らし耳を澄ます」。
古い伝説のある小さな池は、何の変哲もない風景なんだけど、その周りには、草藪の影などあちらこちらに、何かが隠れている。
探してみると、小さな鏡がついた彫刻物なんだけど、そのどれもが地域の人々にとって大事な生活用具なのだ。
思いがけない宝探しゲームとなり、ひとつひとつ探し出す。
鏡の部分には、地域の人々の言葉が刻まれている。
目を凝らしてお宝を探し、人の言葉に耳を澄ます。そんな作業をたっぷり楽しんできたけれど、実は10数個あるはずのお宝、9つしか探し出せなかった~~(’A`)
暑さと陽射しに負ける真夏の芸術祭歩き…。毎度のことだけどね。
今年の大地の芸術祭の目玉的な作品は、もしかしてこれなんじゃないかな?
松代仙納の、酒百宏一「LIFE Woks+みどりの部屋プロジェクト」。
使われなくなった古い納屋のような建物が舞台だ。
酒百さんは新潟市のみずっちにも「Niigata 水の記憶プロジェクト」という作品で参加されているけど、“フロタージュ”=こすり絵という技法でさまざまなものの形をこすり取ったもの。
桶とか農機具とかありとあらゆる生活具から柱、床に至るまで、よくまぁこすり取ったものだなぁ。
スリスリと写し取ってる時の姿を想像して、少しクスッとするのだけど、これってやってると無我夢中になっちゃうのかもしれない。
実際に、私たちも用意された葉っぱを使ってやってきましたよ。
多くの人によってフロタージュで写し取られた葉っぱで全面を飾られたみどりの部屋には、机、緑系の鉛筆、ケント紙が用意され、訪れた人は更に作品を作り出していく。
これがまた次の作品に繋がっていくのかな。
キレイな空間の中で、色鉛筆を握ってゴシゴシ。緑といっても実にさまざまな色があるもんなんだね。それを重ねて塗ることで、さらに人それぞれの緑色が出来ていく。
緑色系の鉛筆が何色もあるように、アートの美しさもいろいろあって、その下にはさまざまなモノが塗り込められている。
そんなことを考えさせられる芸術祭でもありました。
レポ・1、2、4、5、6、7、8、9
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コメント
妻有におでかけいただきありがとうございました。


ブナ林のブランコがハイジのオープニングみたいでとても気に入ったのですが、
普通のブランコの要領でおもいっきりこいだら椅子の足にくるぶし強打し、
そのうえ蚊に食われまくりました
投稿: 妻有人 | 2009年9月17日 (木曜日) 02時29分
>妻有人さん
大地の芸術祭は虫除け&かゆみ止め必携ですね。
あのブランコ、公園の遊具みたいにきっちり作ってないので、チカラいっぱい漕ぐとミョ~な動きをしちゃってませんでしたか。お大事に~(^_^;)
また10月からの芸術祭秋の部が楽しみです。会期中に雪が降るんでしょうね。
投稿: アイアン | 2009年9月17日 (木曜日) 11時21分
たしかにめいっぱいこいでも
横揺れに・・・
11月に入ったらたまに雪が降ることもあるけれど
根雪になるのはもうすこしあとですね。
夏に来てくださったみなさんに
雪の妻有も見ていただきたいです。
投稿: 妻有人 | 2009年9月25日 (金曜日) 02時46分
>妻有人さん
数年前、文化の日に松之山に行ったら急に降り始め、夜には雪見風呂になったことがありました。ビックリ。
真冬にうちのヘタレ車が雪にはまってしまい、近隣の方に助けていただいたのもまだ生々しい記憶です。
秋の部には今のところ2回行く予定です。雪に降られるかな?
投稿: アイアン | 2009年9月25日 (金曜日) 11時51分